こんにちは、CCIでデータマーケティングの推進とプランナーを担当をしている三代(みよ)です。
クッキーレス時代の新たな広告効果分析ソリューションとして注目されている「データクリーンルーム」について仕組みを整理しつつ、サービス提供をしている代表的な各広告プラットフォーマーの特徴を比較してまとめております。
自社が保有しているデータ活用にお悩みの企業様や広告効果分析の高度化を求めている企業様向けに「データクリーンルーム」の必要性をわかりやすく解説しておりますので是非ご参考ください。
■目次
データクリーンルームとは?
データクリーンルーム(Data Clean Room)とは、企業が保有する顧客情報(会員情報、購買履歴、行動ログ)をプライバシーに配慮をした安全な環境で、広告効果分析やターゲット分析、オンオフ統合分析ができるクラウド環境のことをいいます。
個人が特定されるPII情報は全て暗号化された状態でプライバシー保護されるため、分析結果から直接個人を特定することはできなく、統計的な情報のみが分析結果として利用されるのが特徴です。
ユーザーへのプライバシー配慮や個人情報保護法への対応が強く求められる時代においては、クッキーレスが後押しになり従来実施しているデジタルマーケティングのパフォーマンス低下が懸念されております。
そのような状況下で、不足するデータを補いつつ質と量が担保された分析環境として昨今、注目がされているのがデータクリーンルームとなります。
日本では2017年にGoogleがAds Data Hub (通称:ADH)をローンチして以降、メガプラットフォーマーを中心に続々とデータクリーンルーム環境の提供が開始されております。
今回はデータクリーンルームを定義をするにあたって2つに分けて解説ができればと思います。
メガプラットフォーマー系が提供するデータクリーンルーム
豊富な会員基盤(会員ID数)とユニークなユーザー行動情報を保有する大手メガプラットフォーマー(メディア)が主体で提供するデータクリーンルームとなります。
そのため、データクリーンルームを利用する際は、そのメディアに広告を出稿していたり、メディアが設けている条件をクリアして初めて利用が可能となります。
Ads Data Hub (ADH)
Googleが提供するデータクリーンルームとなります。
特徴はGDN、YoutubeなどGoogle保有の大規模なデータを使い横断的に且つ自由な分析ができる点ががあります。
自社で会員基盤をお持ちの企業様は、許諾のとれた自社会員ユーザーデータにGoogle広告接触者やオフライン起点の外部データ(テレビ、店舗購買、位置情報)を統合することでオンオフ統合視点での検証や分析が可能になります。
過去のコラムでも解説をしておりますので併せてご確認ください。
Googleが提供するデータクリーンルーム「Ads Data Hub」を活用して、何ができる?
Amazon Marketing Cloud (AMC)
Amazonが提供するデータクリーンルームとなります。
特徴はAmazon広告のログデータをほぼ網羅して分析対象にできる他、企業が保有しているファーストパーティーデータとのマッチングや、Amazon内の自社オーガニックユーザーの購買ログも使うことができる点があります。
Amazonに商品を販売しており且つAmazon広告で集客を行っている企業様においては、広告貢献効果が大事な指標になるかと思いますので、Amazon Marketing Cloudはそのニーズに答えることが可能な重要なソリューションになるかと思います。
こちらも過去のコラムで解説をしておりますので併せてご確認ください。
Amazonのデータクリーンルーム、知っていますか?Amazon広告の効果を可視化できるソリューション”Amazon Marketing Cloud”
Advanced Analytics (AA)
Metaが提供するデータクリーンルームとなります。
特徴はFacebook/Instagram広告接触データを分析対象にできる点があります。Facebook/Instagramは豊富な広告フォーマットやセグメントデータがありますので広告効果検証においてはより詳細なアウトプットや広告効果検証が期待できます。
LINE Data Clean Room (LDCR)
LINEが提供するデータクリーンルームとなります。
特徴はトレジャーデータ社との共同開発により開発されたデータクリーンルームとなり、国内月間アクティブユーザー約9,200万人のデータを安心・安全な環境で活用できる点となります。
ただし、Treasure Data CDPを基盤としたサービスでもありLINE Data Clean Roomを利用できる顧客はTreasure Data利用しているなど一定の条件があります。
Yahoo!DataXross (YDX)
ヤフーが提供するデータクリーンルームとなります。
これまでインターネット黎明期から支えた圧倒的なデータ量と精度の高いYahoo!会員のデータを活用した自由な分析ができる点が特徴となります。
こちらも、LINEと同様でTreasure Data CDPを導入している企業でないと使えないサービスでもあるため、Yahoo!DataXrossを利用できる顧客はTreasure Data利用しているなど一定の条件があります。
X(旧Twitter) Data Hub Omusubi
電通および電通デジタルとX(旧Twitter)の3社の協力で2021年に提供がされたデータクリーンルームとなります。
Xの広告配信データは、いいねやリポストなどエンゲージメント指標に強みあり、キャンペーンの効果計測やオンラインオフラインのデータと組み合わせることで非常に効果的な分析・検証が可能となります。
上記3社の共同提供となるためOmusubiを利用できる顧客は一定の利用条件があります。
SmartNews データクリーンルーム
スマートニュースが現在ローンチを予定しているデータクリーンルームとなります。
こちらの情報は24年2月に開催されたスマートニュース ビジネスカンファレンス「SmartNews Ads Conference 2024」で発表されたものでまだ仮段階となります。
そのカンファレンスの中で、広告ビジネスの進化の一つとしてデータ活用の進化を目的に広告代理店と「データクリーンルーム」を構築していくことで、より安全なプライバシー保護がされたセキュアな環境下で、広告パフォーマンス分析、ターゲットインサイト分析、ターゲティングの最適化の活用につなげることを目指すと発信しておりました。
情報がアップデートされ次第、改めて本コラムでも発信できればと思います。
ドコモデータクリーンルーム
NTTドコモ、インテージ、ドコモ・インサイトマーケティングの3社が、ドコモの強固な顧客基盤とインテージが持つ分析力を兼ね備えたデータクリーンルームの提供を開始しました。
特徴としては、保有データの質と量があります。
ドコモが保有する1億以上のdポイントクラブ会員の属性情報や位置情報、インテージが提供する消費者購買データの「SCI」や、インテージ子会社が提供する「買いログ(CODE)」の購買データを顧客から必要な同意を得た上で活用することが可能です。
その他にも、以下特徴が挙げられます。
・ドコモの独自AIエンジンであるdocomo Senseを活用したプロファイリングや行動情報を利用可能
・広告主が保有するファーストパーティデータとセキュアかつプライバシー保護に遵守した安全な環境でデータコラボレーションが可能
・データ収集、統合、分析、可視化、最適化を一気通貫で対応可能
※サービスの提供・データ基盤の開発はドコモ・インサイトマーケティング(DIM)が担います。
独立系企業(プライベート系)が提供するデータクリーンルーム
導入を検討する企業が主導で独立したビジネスやマーケティングに活用ができる点が特徴となります。
上記メガプラットフォーマー系とは異なり、自社主導でデータクリーンルームを構築していくので自社の会員データや顧客データ以外のデータは入っていないです。そのため必要に応じてデータを調達する機能としてデータコラボレーション機能が導入されているのも特徴の一つとなります。
※データコラボレーション
企業間で同意の上で自社が保有するデータ(会員、2ndPartyデータなど)を共有し、顧客情報のアップデートやインサイトを発掘してマーケティング価値を向上させるプロセス
LiveRamp
共通IDソリューションを提供している代表的な企業であるLiveRampもLiveRamp Safe Havenという、プライバシーを重視したデータコラボレーションプラットフォームを提供しております。
本来はアドテク企業として広告主やアドネットワーク事業社を仲介する位置にあるためアドテク系データクリーンルームとも定義がされますが、データクリーンルーム専業企業のHabuを買収しておりさらなる機能強化が注目されております。Habuはメガプラットフォーマーが提供するデータクリーンルームをまさに名前の通りハブとしてアクセスできるプラットフォームを提供しておりました。
今回の買収により、メガプラットフォーマーへの対応とオープンな開発環境にも対応した統合的なデータクリーンルームの提供が期待されております。
Snowflake
Snowflakeもデータクリーンルームを提供している企業の一つとなります。Snowflakeを導入している企業は、Snowflake内のプラットフォーム上で、匿名化した自社データをマネタイズしたり購入したりすることが可能です。
主要なクラウドサービスとも連携しており、自社顧客情報のアップデートやデータコラボレーションによる顧客情報の高解像度化が可能となっております。
Acompany
独自開発に開発されているPETsは、国内法に準拠して安全にリスクを軽減したデータ活用が可能となります。
また、テクノロジー面においても秘密計算技術により、機密データの直接的な送受信を避け、個人を秘匿化/暗号化したままデータ分析が可能となっており最大限安全性に配慮をしたサービスを提供しております。
Syncly
CCIでも企業のファーストパーティデータ活用を支えるデータクリーンルームソリューション「Syncly (シンクリー)」というデータクリーンルームサービスを提供しております。
カナダを拠点として米国や欧州各国にデータコラボレーションプラットフォームを展開するOptable社と提携をして日本でのサービス展開をしております。
最大の特徴が簡単で見やすいUI設計で且つNo Code(SQLいらず)なプラットフォームとなります。
データクリーンルームやその他データソリューションはその特性上どうしてもデータ技術者やデータ抽出スキルを持った人材が必要となります。それが一因でデータクリーンルームの導入や活用が進まない要因にもなりますが、Synclyではそのような課題を解決できるソリューションにもなっております。
また、低コスト、高セキュリティ、データコラボレーションによるビジネス拡張に特化したソリューションである点も強みとなります。
Synclyの解説は以下の記事で詳しく解説しておりますので是非ご確認ください。
タイパも良くて高コスパ?独自のデータクリーンルームサービス「Syncly」の導入メリットとは?
最後に
いかがでしたでしょうか?
本コラムを通じて自社で保有している顧客データや会員データのアップデート、データを活用したマネタイズ化を目的としたデータクリーンルームの導入を検討している企業様がいましたら是非お問い合わせをお待ちしております。
CCIでは今回ご紹介したデータクリーンルームサービス Syncly (シンクリー) の他にもサードパーティクッキー廃止に対応したデータ統合支援・活用サービス Data Dig (データディグ)を提供しております。
広告ターゲティング、広告効果分析、広告最適化、コンバージョン欠損対策など様々な対策をご提供しておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせお待ちしております。