【クッキーレス 解説】対策・ソリューションまとめ ~広告配信編②~
こんにちは、CCIでクッキーレス対策の支援をしておりますデータマーケティング担当の三代(みよ)です。
Google Chromeにおけるサードパーティクッキー廃止は、今後のデジタル広告において大きな影響が懸念されます。
本コラムではサードパーティクッキー廃止が注目される中で様々な対策やソリューションが提供されておりますので複数回に分けて取り上げてきました。
今回は前回お伝えしきれなかったクッキーレスに影響を受けないデジタル広告の配信手法を解説させていただきます。
過去の記事はこちらとなります。
【第2回】クッキーレス解説~ファーストパーティーデータ配信編~
■目次
コンテキストターゲティング
コンテキストターゲティング(コンテクスチュアル広告)とは、自社商品やサービスと親和性の高いメディアや記事コンテンツに広告が露出されるターゲティング手法となります。
類似したターゲティング手法に「コンテンツターゲティング」や「キーワードターゲティング」がありますが、コンテキストターゲティングの特徴はコンテンツ内記事の文脈やクリエイティブをAIで解析し、ターゲティング対象を決める点がポイントです。
この技術により従来のコンテンツターゲティングやキーワードターゲティングと比べて、広告のマッチ率が向上されることが期待されます。
また、サードパーティクッキーを使用して「人」に対してターゲティング配信をすることはせず、「掲載面や枠」に対して配信する仕組みで今後のサードパーティクッキー廃止によるターゲティング精度の悪化を受けない配信技術として注目されております。
サービスを提供する代表的な企業としてはGumGum、マイクロアドがあげられます。
その他にも動画広告に特化したZEFRなどがあります。
コンテキストターゲティングの詳細は以下コラムで詳しく解説しておりますので併せてご確認ください。
クッキーレス対策で検討すべきデジタル広告とは?コンテキストターゲティングの有用性を解説
また、Googleでもユーザーの興味関心を推測する「Topics API」をリリースしており今後の開発やマーケティング活用に注目が集まっております。
※本コラムでは「Topics API」についても解説できればと思います。
共通ID
【第1回】クッキーレス解説~データ収集・統合・同意取得編~ でも軽く触れておりますが共通IDソリューションもサードパーティクッキーの代替技術として注目されています。
共通IDソリューションには2つの形式が存在します。
①確定ID
・ユーザーの個人を特定可能な情報(PII)をもとにIDを付番
・精度が高い一方で、メールアドレスなどのキーをユーザーに生成してもらうのでID取得にハードルがある
・主なサービス:「Unified ID 2.0」「LiveRamp ID」
②推定ID
・IPやデバイス、スクリーンの解像度、 OS等から推測して類似度の非常に高いIDを付番
・ボリュームが確保できる一方で、精度が求められるような場面では確定IDに分がある
・主なサービス:「ID5」「IM-UID(Intimate Merger Universal Identifier)
共通IDソリューションを活用した本格的な実用化に関しては、現在以下のような課題を整理する必要があります。
主な課題
・共通IDソリューションで生成されたID数の増加:ボリュームの拡大
・サプライサイドのIDソリューションの導入:広告メニューやサービスの普及
・異なるIDソリューションを統合できるモジュールの導入(共通ID事業者毎に何社分も対応しなくて済む):汎用性の拡大
・プライバシーへの配慮:ユーザーの同意取得
今後はサードパーティクッキー廃止に伴い共通IDの普及が期待できます。そこから利用可能なメディアやDSPの実績が増加することでしょう。
Privacy Sandbox (プライバシーサンドボックス)
Privacy Sandbox (プライバシーサンドボックス)とはGoogleが提唱する、ユーザーのプライバシー保護を強化しつつ最適な広告を届ける仕組みの名称となります。ユースケースごとに様々なAPIが提供されております。
ポイントとしてはGoogleが提唱しているという点です。つまりGoogle Chromeが主な対象範囲となります。
Appleは2017年に既にユーザーのプライバシーを守るためITP(Intelligent Tracking Prevention)を発表しておりその間にいくつかのアップデートを繰り返してきました。その結果、2020年時点でサードパーティークッキーは既にブロックされています。
Privacy Sandbox (プライバシーサンドボックス)は、ターゲティングや効果測定など目的に応じていくつかのAPIで構成されており、消費者のプライバシー保護を遵守しつつ広告を配信したいマーケターやパブリッシャーのニーズとバランスを取ることを目的としております。
今回のコラムではコンテンツや広告のターゲティングに関連する2つのAPIを解説いたします。
①Topics API (トピックスAPI)
Privacy Sandbox (プライバシーサンドボックス)のAPIの一つで、ユーザーのウェブ閲覧履歴に基づいて、ブラウザがユーザーの関心の高いカテゴリを推測する機能となります。
つまり、新たなオーディエンスターゲティング配信における技術と位置づけられます。
これまではサードパーティクッキー(広告配信事業者)が、ユーザーのWeb上の回遊や行動履歴をもとにセグメントを定義して広告を配信をしていました。
Topics APIでは、サードパーティクッキーのように訪問したサイトの情報が各ウェブサイトを介して共有されるのではなく、ブラウザ上(Google Chrome)でトピックの表示や不要なデータを無効化する設定が可能となります。
大まかな流れとしては以下の通りです。
・Google Chromeユーザーがウェブサイトを閲覧
・ユーザーが直近訪れたサイト閲覧履歴から高い頻度で消費しているジャンルやトピック情報をブラウザが記録
・自身のブラウザで1週間単位で閲覧履歴のある上位5つのトピックス(興味関心)とランダムで抽出されたトピックスがブラウザ内に保存をして広告会社のサーバーに伝える
※ランダムに抽出したトピックを加えることで、さらに個人の特定を防ぐ。
・広告配信会社はリクエストを通じて受け取ったトピックスをもとに広告を配信
上記のような流れでプライバシーを保護しながら興味関心に合わせた広告が配信が可能となります。
②Protected Audience API (プロテクテッド・オーディエンスAPI)
Topics API が新たなオーディエンスターゲティング配信とするならば、Protected Audience APIは新たなリマーケティング配信技術の一つと位置づけられます。
※昨年まではFLEDGEという名称でした。
従来のリマーケティング広告ではサードパーティクッキーを使い、ユーザ行動をクロスサイトでトラッキングをして広告を掲載していました。Protected Audience APIにおいてはブラウザ内で広告掲載の決定がされるため、ユーザー情報が外部へ送信されることがありません。
大まかな流れとしては以下の通りです。
・広告配信会社の広告タグを広告主サイトに設置
・Google Chromeユーザーが広告主サイトに訪問して商品や商材の情報を閲覧
・広告配信会社のタグが作動して、ターゲットのブラウザ上に閲覧情報や入札情報(入札単価、どのクリエイティブを掲載するか、広告URLなど)を保存
・サイトを一度離脱して広告枠のある外部メディアを回遊
・ブラウザにある広告タグに保存されている情報をもとにオークションが開始
・広告配信会社へ入札リクエストが要求
・広告が掲載される
これまではサードパーティクッキーを”人”とみなしていたものが、ブラウザに置き換わったと思うと整理がし易いのではないでしょうか?
国内においてはマイクロアドが先駆けてProtected Audience APIを利用した配信機能を昨年11月よりリリースをしており注目を集めております。
Privacy Sandboxについて興味のある方は過去に複数回に渡り別のコラムでも解説しておりますので併せてご確認ください。
Google Privacy Sandbox(プライバシ―サンドボックス)概要
Privacy Sandbox(プライバシ―サンドボックス)がもたらす広告ターゲティングの影響とは
Privacy Sandbox(プライバシ―サンドボックス)がもたらす効果計測の影響とは
注意点
Privacy Sandboxや関連するTopics APIとProtected Audience APIにはいくつか注意点があります。
・Google Chrome利用者が対象
・Googleが定義したトピック(興味関心カテゴリ)にあわせる必要がある
・Privacy SandboxのAPI導入と実用化をしている広告プラットフォーム事業者やSSP事業者のみ配信が可能
・今後もAPIの開発や進化が進む可能性があるため都度アップデートが必要
最後に
現在、ユーザーの許諾が取れたメールアドレスや電話番号をもとにしたファーストパーティデータを活用した配信や、今回ご紹介したコンテキストターゲティングなどの配信手法の導入は活発化がされてきている印象です。
また、Privacy SandboxのAPIを活用した配信手法も検証を重ねて議論が重ねられているステータスでもあります。
ただ注意点としては、これまで実施していたサードパーティクッキーを活用したターゲティング広告と今回ご紹介したターゲティング手法(Privacy SandboxのAPIを活用した)は配信時の比較が難しい点があります。
本来であればA/Bテストのような形で広告主にとって最適なパーフォーマンスを発揮する広告手法に予算を投下してROIの最大化を目指したいと思いますが、時系列上、サードパーティクッキー廃止は間近のため同時併用は難しい印象です。
また、オーディエンスターゲティングやリマーケティングの定義としては代替されるものの、入札をする条件やターゲティング条件やターゲットグループの選定基準や粒度などそもそもの仕組みが異なる点も留意した方が良いと思います。
そのため同条件でパフォーマンスの比較や検証は難しいため、今後はこれまで実施していた広告施策をギリギリまで活かしつつ、そこで得た運用におけるナレッジや戦略設計を踏襲して今回ご紹介したターゲティング手法へのチャレンジがされていくのではないでしょうか?
次回の第4回ではサードバーティクッキー廃止により懸念がされる分析・検証粒度の悪化について、解決に導く分析・検証関連のソリューションを解説予定です。
【第2回】クッキーレス解説~ファーストパーティーデータ配信編~
CCIではもはや不可避となっている脱クッキー対応と自社のマーケティング施策にどこまで影響があるのか改善策・解決策もあわせてご提示できればと思いますので是非お問い合わせをお待ちしております!