【クッキーレス 解説】対策・ソリューションまとめ ~分析・検証編~
こんにちは、CCIでクッキーレス対策の支援をしておりますデータマーケティング担当の三代(みよ)です。
Google Chromeにおけるサードパーティクッキー廃止によるマーケティングへの影響が懸念されます。
本コラムではサードパーティクッキー廃止が注目される中で様々な対策やソリューションが提供されておりますので複数回に分けて取り上げてきました。
第4回目の最後は分析・検証編と題しましてサードバーティクッキー廃止により懸念される分析・検証精度の悪化について、解決に導くソリューションを解説させていただきます。
これまでの記事は以下となりますのでご参照くださいませ。
【第2回】クッキーレス解説~ファーストパーティーデータ配信編~
【第3回】クッキーレス解説~コンテキスト配信、共通ID、プライバシーサンドボックス編~
■目次
データクリーンルーム
データクリーンルーム とは、主にGoogleやAmazonなどの大手メガ広告プラットフォーマーが提供する、データ統合・分析用のクラウド環境サービスの通称となります。
これまでは、サードパーティクッキーを活用して広告接触者やサイト来訪者の分析および広告配信用のセグメント作成、広告配信を行いマーケティングのPDCAを最適化しておりました。
しかし、今回のサードパーティクッキー利用廃止をきっかけに、データを活用したマーケティングにおいては人を特定しない環境で個人情報やプライバシー保護の遵守、利用用途を明確にしてユーザーに同意取得をすることが求められております。
そこでデータクリーンルームにおいては、広告主の許諾のとれたファーストパーティデータと広告プラットフォーム事業者が保有しているユーザーIDをセキュアな環境で連携をすることで、従来の広告配信レポートを超えた広告の効果検証・アトリビューション測定が可能になります。
また、位置情報データやテレビ視聴データ、購買データを持つ事業者データ(セカンドパーティデータ)を活用することで、オンライン・オフラインデータを統合して分析することが可能になります。
主な特徴としては以下があげられます。
・オンオフ統合の分析や検証が可能(別途セカンドパーティデータを準備する必要あり)
・サードパーティクッキーと異なり確定的なデータを基に分析や検証が可能
・クッキーと異なり時間とともにデータが消失しない(データ保存量の関係で消さない限り)
・広告管理画面やDMPの管理画面と異なりデータ加工は利用者次第で柔軟な設計が可能
以前、本コラムでもクッキーレス時代のデータマーケティングの鍵を握る「データクリーンルーム」とは?を解説をしておりますので併せてご確認くださいませ。
データコラボレーション
上記で記載しているデータクリーンルームサービスは主にGoogleやAmazonなどの大手メガプラットフォーマーが提供しているデータクリーンルームサービスを指しております。
注意点としては各プラットフォーマー(メディア)が主体のデータクリーンルームサービスという点があります。
【注意点】
・データクリーンルームの主な利用者は広告主
・デジタル広告を一定量出稿している必要がある(データ収集や分析に使うログデータが必要なため)
・広告接触者起点での効果検証に特化
・各プラットフォーマー(メディア)毎にデータクリーンルームの仕様やルールが異なる
・各プラットフォーマー(メディア)毎の仕様を理解した専門のデータ人材の育成や人材の確保が必要
・各プラットフォーマー(メディア)毎に分析内容を開発、データ抽出、分析設計する必要がある
一方で上記メガプラットフォーマー系とは異なり、自社主導でデータクリーンルームを構築が可能な独立系企業(プライベート系)が提供するデータクリーンルームも存在します。
※各社のデータクリーンルームの解説は以下をご参考ください。
データクリーンルームとは?クッキーレスで注目されるデータクリーンルーム(Data Clean Room)をわかりやすく比較
独立系企業(プライベート系)が提供するデータクリーンルームは基本的にサービス契約者つまり自社が保有する会員データや顧客データ以外のデータは入っていないのでデータが不足する可能性があります。そこで必要に応じて不足するデータを調達する機能としてデータコラボレーション機能を提供しているサービスがあるのが特徴の一つとなります。
弊社でも柔軟なデータマーケティング展開を求めている企業様に対して、企業のファーストパーティデータ活用を支えるデータクリーンルームソリューション「Syncly(シンクリー)」の提供を開始しました。
ExchangeWireJAPAN様にも記事を展開しており、データクリーンルームの導入における課題や活用メリットを解説しております。
CCIとOptableの提携でデータクリーンルームを民主化[インタビュー]
「Syncly (シンクリー)」では、広告主様や事業会社様、データベンダー様、媒体社様など各方面でファーストパーティデータを保有している企業様であれば自社主導でデータクリーンルームの導入を通じて広告のプランニングやマーケティングの支援までを一気通貫で実行が可能となります。
また、企業間で同意の上であればデータコラボ―レーションをすることが可能で顧客解像度の向上と、新たなターゲットの発見が可能となり拡張性のあるサービスとなります。
【Syncly (シンクリー)の特徴】
・企業が構築しているデータ基盤と「Syncly (シンクリー)」で連携可能
・他企業のファーストパーティデータとデータコラボレーションにより顧客解像度の向上やマーケティング施策へのシームレスな連携が可能
・低コスト且つノークエリ(SQLいらず)な簡易的なプラットフォーム
※簡易的なCDPとしても利用できコスト削減にも貢献できます。
・自社データのマネタイズや新たな商品開発が可能
アナリティクスツール
Googleアナリティクス4 (GA4)のようなアナリティクスツールにおいては、ファーストパーティークッキーを使用しているため、今後も従来行っているようなアクセス解析は現状では可能となります。
GA4のメリットとして、Googleのクラウドストレージサービス「BigQuery (BQ)」など各種Googleサービスに接続してデータを蓄積・連携ができる点が挙げられます。
今後のマーケティングにおいては【第2回】クッキーレス解説~ファーストパーティーデータ配信編~でも述べている通り、ファーストパーティーデータの収集と活用が重要となります。アクセス解析データのほか、自社サービスの会員情報や購入者履歴、契約情報、サイトの利用状況など様々なデータを活用することでマーケティングの高度化が必要になります。
例えば各Googleサービスを活用して点在しているファーストパーティーデータを統合する仕組みを作ってしまえば複雑な検証からデータ活用まで一気に活用の幅が広がります。
※イメージ
弊社でもGA4導入/運用支援サービスを提供しております。会員IDの取得やデータ基盤の活用などこれまで多くの企業様に対して支援をさせていただいております。支援内容に興味関心がある方は、ぜひお問い合わせください。
Privacy Sandbox
こちらも前回の【第3回】クッキーレス解説~コンテキスト配信、共通ID、プライバシーサンドボックス編~でも解説しましたが、Privacy Sandbox (プライバシーサンドボックス)とはGoogleが提唱する、ユーザーのプライバシー保護を強化しつつ最適な広告を届ける仕組みの名称となります。ユースケースごとに様々なAPIが提供されております。
そのAPIの中にはサードパーティクッキーを使用せずに、コンバージョン計測やリーチ計測が可能なAPIが提供されております。
■Attribution Reporting API
Attribution Reportingを実装すると、サードパーティクッキーを使用せずに、広告主や広告配信業者は特定の条件のもとで、コンバージョンを測定することが可能です。
このレポートには2つのAPIが存在しており、イベントレポートと集計レポートが存在しております。
1:イベントレポート
・特定の広告における個々のインプレッションやクリックに対して広告成果の関連付けがわかる
・ただし、レポートに含む情報量には制限がある(購入金額、購入単価まではわからない)
・一定のノイズが含まれるため精度を求められるケースは要検討
2:集計レポート:
・イベントレベルレポートより詳細なデータが取得可能(購入金額、購入単価など)
・ただし、個々のイベントは確認ができない
・あくまで集計値を知ることができる
■Private Aggregation API
Private Aggregation API を実装すると、各Webサイトがユーザーデータを集める際にブラウザ側で暗号化しておくことで、クロスサイトでのユーザー回遊履歴はプライバシー保護がされます。よってこのAPIは、プライバシーを保護しながらクロスサイトのデータ集計に利用ができるものであり、クロスサイトのリーチ計測が有効となります。
Privacy Sandboxについて興味のある方は過去に複数回に渡り別のコラムでも解説しておりますので併せてご確認ください。
Google Privacy Sandbox(プライバシ―サンドボックス)概要
Privacy Sandbox(プライバシ―サンドボックス)がもたらす広告ターゲティングの影響とは
Privacy Sandbox(プライバシ―サンドボックス)がもたらす効果計測の影響とは
その他:サードパーティクッキー廃止により影響が考えられる手法
現状、各社ともサードパーティクッキー廃止における対策は各社のリリースや実装待ちが多く推測の域を出ませんが以下のサービスを導入している企業様や担当者様はサービス提供をしている各ベンダー様に確認をすることを推奨します。
■ブランドリフト調査
デジタル広告における代表的な効果検証手法の一つです。配信した広告の接触グループと非接触グループを比較しながら広告貢献効果やブランド好意度を把握する分析が一般的かと思います。
今後のサードパーティクッキー廃止により、広告接触/非接触グループの分別や既にナレッジが溜まっているブランドリフトを高めることができる広告セグメントのボリュームや配信精度が低下する可能性があります。
そうなるとメディアプランニングや広告配信セグメントの再設計が必要になる可能性がありますので注意が必要です。
■PublicDMP
これまでPublicDMPを提供する各社はサードパーティクッキーに依存したサービス展開をしておりました。
独自の行動履歴データ、属性データ、興味関心データなど不特定多数のオーディエンスデータをサードパーティクッキーの形式で保有して、DMP導入企業のサイト来訪データや会員データと紐づけて顧客分析やDSPにデータを連携して広告施策へ活用しておりました。
今後はサードパーティクッキーの活用が困難になるため、その対策の一つとして共通IDの導入を推進しております。
DMP自体はただのデータを蓄積する箱となるため、サードパーティクッキーによるユーザーキーとなる代替のID技術としてプライバシー保護を維持しながら、これまでのデジタル広告におけるターゲティング広告の精度を担保したり分析利用が可能となります。
■インターネット視聴率調査
インターネット視聴調査においてもサードパーティクッキー廃止における影響を受けます。どのくらいの人に、どの広告やメディアが、どのくらい重複で、ターゲットに対してどのくらい届いたかを見る際に第三者計測サービスとしてサードパーティクッキーに頼っていたからです。
ニールセンではIDシステムをアップデートしており「人/ID」ベースで正確な広告効果を測定、精度の高い測定サービスを提供しております。
■MMM分析
サードパーティクッキー廃止における新たなマーケティング分析手法として注目されているのがMMM分析です。
MMM分析モデルを作成する際は過去のオンライン/オフラインの広告出稿データや各時期に遡り、売上や契約数などの成果データ、外部要因(季節、競合の動き)を取りまとめて分析する必要があります。
膨大なデータからどの広告や施策が影響して成果につながったかを包括的に数値化、可視化をする分析手法となります。
一見過去のサードパーティクッキー廃止における影響を受けないと思われがちですが、注意が必要です。
何故かというと、サードパーティクッキー廃止前の広告施策のデータを教師データとしてMMM分析をしている場合は今後同じ指標での検証が難しくなる為、施策の再現性がなくなるためです。
MMM分析の結果、作成されたパフォーマンスが期待できる広告媒体選定や予算配分のシミュレーションにおいては、サードパーティクッキー廃止により精度が低下している可能性があるので広告プランニングの見直しやコンバージョン欠損対策をした上で分析をする必要があります。
最後に
いかがでしたでしょうか?
全4回に渡り様々な対策やソリューションを解説をさせていただきました。
【第2回】クッキーレス解説~ファーストパーティーデータ配信編~
【第3回】クッキーレス解説~コンテキスト配信、共通ID、プライバシーサンドボックス編~
今後も各社でクッキーレスソリューションの実装やリリースが活発化することが予想されます。
遅くとも、2024年7月までには翌月以降の広告施策のプランニングに間に合うように以下要点を整理して対策を準備する必要があります。
①社内体制の啓蒙や影響度の把握
②現在実施している広告施策の整理
③現在実施している広告施策における成果と影響範囲の精査
④現在実施している分析内容と影響範囲の精査
⑤現在導入、リリースがされている対策サービスの精査
CCIではクッキーレスに対応したデータ統合支援・活用サービス Data Dig(データディグ)および今回ご紹介した企業のファーストパーティデータ活用を支えるデータクリーンルームソリューション Syncly (シンクリー)を提供しております。ご興味のある方はぜひお問い合わせください!
>>お問い合わせフォーム|ポストクッキー時代のデータ統合支援・活用サービス『DataDig』